深視力検査

 大型自動車免許や二種免許の取得、更新の際には、通常の視力検査(遠見視力)以外に深視力検査が行われます。
これは 「視力」と名が付いていますが、一般的に言われる視力とは違い、両眼視機能と呼ばれる眼の能力のうち、もっとも高次元な機能である立体視の検査のことです。

 人間は2つの眼を持っていますが、この2つの眼はあたかも1つの眼のように働いています(同時視)。これは両眼で受け入れた感覚を脳で統合して1つの新しい感覚としているからで、この機能のことを両眼視といいます。両眼視には融像立体視があります。融像とは右眼と左眼それぞれの網膜に映った像を1つにまとめてみる働きのことで、立体視とはものを立体的にみる感覚で、これは右眼と左眼が離れていてそれぞれの眼の網膜に映った像の位置が異なるためにおこります。

 深視力検査は、「三桿(さんかん)試験」という方法で行われます。
3本の棒のうち両端の2本が固定され、その間の1本が前後に移動し、3本が並んだと感じたときにボタンを押し、そのズレを測定します。自動車免許では、3回の試験のズレの合計が6センチ未満の場合に合格となります。

 この三桿試験に合格しない理由には3つのケースが考えられます。

1.遠近感は問題ないものの、視力が悪く、3つの棒が明視できていない。
2.両眼視機能の低下・欠如
3.試験の要領を理解していない。

順に説明しますと、

 1のケースは、屈折異常(近視・遠視・乱視)の影響で、桿(棒)の像がはっきりと見えていない状態です。下述する両眼視機能に問題が無ければ、正しく視力矯正することにより合格できます。

 2のケースですが、両眼視機能を矯正できる場合とできない場合とがあります
精密な立体視は、左右両方の眼が同時に同じ物体を見て生じるものです。外傷や病気により片眼の視力が消失・著しく低下している場合や、斜視により同時視ができない場合などでは精密な立体視は得られません。片眼でも、物体の陰影や大きさなどを判断してある程度の距離感は得られますが、精密な立体視と呼ぶには程遠いものです。
 両眼視機能は、眼と視力の発達と共に身に付いてくる基本的な視機能です。これらの機能は誕生から乳幼児時代に発達し、6歳ころにほぼ完成します。この両眼視機能の発達の障害になる事例としては、乳幼児期の、「遠視による斜視・弱視」、「長期間の遮眼による弱視」、「左右眼の屈折差が大きいこと(不同視)による不等像」 などが挙げられます。残念ながら、この場合は治療方法も矯正方法も無い、というのが現状です。
 もう1つは、斜位という眼位の異常や輻輳(眼球の内寄せ運動)の不全などにより、両眼視機能が低下している場合があります。この場合では、眼鏡による両眼視機能の矯正と、視能訓練という両眼視機能の訓練により改善させることができる可能性があります。(訓練の内容はこちらで簡単に解説しております)
どちらの状態なのかは、視力検査だけではなく、精密な両眼視機能の検査を行わないと判断できません。

 視力にも両眼視機能にも問題が無くとも、3のケースは意外と多いものです。この三桿試験は、大型自動車免許や二種免許の取得・更新以外には、ほとんど行われませんので、自動車学校で初めて経験することになります。要領が良く理解できないうちに行われますから、案外合格率が低かったりします。前述の視能訓練と、三桿法検査器による練習でコツを飲み込めば大丈夫です。ただ、練習の場が少ないのは問題ですが・・・・

用語解説 (医学書院:「屈折異常と眼鏡」より)
正位と斜位・・・両眼で遠いところにある目標を見ていて、片眼をおおったとき、おおわれた眼はその眼の固有の位置をとる。これが臨床的に用いられる眼位で、両眼の視線が正しく目標に向かっている場合を正位、視線がずれるものを斜位および斜視という。
斜位・・・斜位は両眼を開いて見ているときには、両眼の視線が集中しているが、もともと眼の位置が完全に正しくないため、両眼を開いた瞬間には視線が目標に集中しない。しかし、そうするとものが二重に見えるので、融像を働かせ、視線を合わせてものを1つに見る。斜位の程度が強いと、融像の努力をいつも強く働かせる必要があるので眼が疲労し、ときには融像を保つことが無理になって視線がはずれ、ものが二重にみえるようになる。
斜視・・・両眼視の機能が不良であれば斜視になる

 自動車学校を卒業したものの、適性検査の深視力検査に合格できず免許取得を断念せざるを得ないこともあるようです。大型免許の教習にかかる費用や時間は大変なものです。せめてそれが無駄にならないように、自動車学校では事前に充分な検査を行ってから入校を認めてもらいたいと思いますし、二種・大型免許所得をご希望の方は、入校前に両眼視機能の検査をなさることをおすすめいたします。

追記:
「深視力は眼鏡で矯正できる」という断定的な謳い文句を目にすることがあります。
多くの方が両眼視機能を考慮した眼鏡や練習により、深視力検査に合格できるようになるのは事実ですが、眼鏡では深視力が得られない方が少なからずいらっしゃることもまた厳然たる事実です。このことを最後に書き添えておきたいと思います。

関連リンク:
深視力を改善する
深視力用メガネ

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